従業員の死亡という不幸な事態は、会社にとっても大変悲しい出来事です。しかし、遺族のために適切な手続きを滞りなく行うことは企業の重要な責務といえます。今回は、持病による死亡ケースを例に、給与等に関する必要な手続きをご説明します。
社会保険・雇用保険の手続き
社会保険および雇用保険については、通常の退職と同様に喪失手続きを行います。死亡日を退職日として扱い、以下の点に注意して手続きを進めましょう。
健康保険・厚生年金:死亡日(退職日)の翌日で資格喪失手続き
雇用保険:死亡による資格喪失手続きのみ実施(離職証明書の発行は不要)
所得税
死亡時の所得税は通常の退職と大きく異なります。
■ 死亡後の給与の扱い
死亡日後に支給期が到来する賃金は「相続財産」となり、所得税の課税対象外となりますので、給与から所得税を控除しないよう注意しましょう。
【具体例】
月末締め・翌月末支給の場合、3月25日に死亡したケースでは:
1月分(2月末支給)の給与:所得税課税対象
2月分(3月末支給)の給与:所得税課税対象外
3月1日〜25日分(4月末支給)の給与:所得税課税対象外
■ 年末調整の実施
死亡した年の年末調整は、死亡日以前に支給された賃金のみを対象として速やかに実施します。
【具体例】
月末締め・翌月末支給の場合、3月25日に死亡したケースでは:
・1月および2月支給分の給与で年末調整を実施
・生命保険料控除等は相続人が準確定申告で申告可能なため、年末調整は早めに実施し、源泉徴収票を速やかに発行することをお勧めします
■ 給与支払いの注意点
死亡した従業員の口座は凍結されるため、死亡日以降の給与および還付金は相続人の銀行口座への振込または手渡しとしてください。
住民税
住民税についても、通常の退職と同様の手続きが必要です。特別徴収から普通徴収への切替えを行うため、異動の事由は死亡として住民税異動届を作成・提出しましょう。残額は相続人が支払うことになります。
最後に
従業員の死亡に際しては、給与関連の手続きだけでなく、弔慰金の支給やお通夜・葬儀への対応なども必要です。遺族の方への心配りを忘れずに、丁寧な対応を心がけましょう。
なお、死因が業務上の事由による場合は、労災保険の給付申請など別途必要な手続きがありますので、その際は別途ご相談ください。