
障害者雇用に関する大きな変化が、2026年7月1日に訪れます。民間企業に適用される障害者の法定雇用率が、現行の2.5%から2.7%へと引き上げられることが決定しています。
「うちはまだ大丈夫」と思っている中小企業の経営者・人事担当者の方にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。今回の引き上げにより、これまで雇用義務のなかった企業も新たに対象となる可能性があり、採用・定着のための準備には相応の時間が必要です。早めの現状把握と対応が、いまもっとも大切です。
法定雇用率とは何か
障害者雇用促進法に基づき、一定規模以上の企業には、従業員に占める障害者の割合を法定雇用率以上にする義務が課されています。この対象となる「障害者」とは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っている方を指します。
法定雇用率はこれまでも段階的に引き上げられてきました。
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時期 |
民間企業の法定雇用率 | 雇用義務が生じる企業規模 |
| 2021年3月~ | 2.3% | 従業員43.5人以上 |
| 2024年4月~ | 2.5% | 従業員40.0人以上 |
| 2026年7月~ | 2.7% | 従業員37.5人以上 |
2026年7月の引き上げで何が変わる?
今回の改正のポイントは大きく2点です。
① 雇用率が0.2ポイント上がる
現在2.5%から2.7%へ引き上げられます。一見わずかな差に見えますが、たとえば従業員50人の企業であれば雇用義務の人数が「1人」から「1人(50×2.7%=1.35→切り捨て)」と変わらないケースもある一方で、規模によっては必要人数が増える場合があります。現在すでに2.5%を達成している企業でも、2.7%では未達になる可能性があるため、必ず再計算が必要です。
② 対象となる企業の範囲が広がる
雇用義務が生じる従業員規模が「40.0人以上」から「37.5人以上」に変わります。従業員数が38〜40人前後の企業は、今回の改正で初めて障害者雇用の義務対象になる可能性があります。「うちには関係ない」と思っていた企業が、今回から対象になるケースも少なくありません。
自社の雇用義務数を確認しよう
自社が対象かどうか、何人の障害者を雇用すべきかを確認するためには、まず「常用雇用労働者数」を正確に把握する必要があります。カウントのルールは以下のとおりです。
- 週30時間以上の労働者 → 1人としてカウント
- 週20時間以上30時間未満の短時間労働者 → 0.5人としてカウント
- 週20時間未満の労働者 → カウントしない
正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も、1年以上継続して雇用されている(または見込まれる)場合は対象に含まれます。
【計算例】常用雇用労働者数が50人(正社員40人+週25時間パート20人)の場合
正社員40人 × 1 + パート20人 × 0.5 = 50人
雇用義務数 = 50 × 2.7% = 1.35 → 1人(小数点以下切り捨て)
常用雇用労働者数の合計が37.5人以上であれば、2026年7月から雇用義務が生じます。まずは自社の実態をしっかり確認しましょう。
障害者のカウント方法
雇用している障害者が何人として算定されるかも、正確に把握しておく必要があります。
- 週30時間以上の障害者 → 1人
- 重度の身体・知的障害者(週30時間以上)→ 2人としてカウント(ダブルカウント)
- 週20時間以上30時間未満の障害者 → 0.5人
- 精神障害者(週20〜30時間未満) → 当分の間、1人として特例算定
- 週10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体・重度知的障害者 → 0.5人(2024年4月から算定可)
週10〜20時間の短時間雇用も算定できるようになったことで、勤務時間の調整がしやすくなっています。
達成できなかった場合のリスク
法定雇用率を達成できていない企業には、いくつかのリスクが生じます。
障害者雇用納付金の支払い
常用労働者数が100人を超える企業で法定雇用率に満たない場合、不足人数1人あたり月額5万円の「障害者雇用納付金」を納める義務があります。100人以下の企業は現在この納付金の対象外ですが、段階的に対象が広がる見通しのため、今後の動向に注意が必要です。
行政指導と企業名公表
法定雇用率が著しく低い企業には、ハローワークから障害者雇入れ計画書の作成が命じられます。改善が見られない場合は、最終的に企業名が厚生労働省のウェブサイト等で公表される可能性があります。企業イメージへの影響はもちろん、採用活動や取引関係にも悪影響が及ぶことがあるため、軽視できません。
実務として今すぐやるべきこと
現状把握
まず自社の常用雇用労働者数と、現在雇用している障害者数を正確に確認します。雇用率を計算し、2.7%に対してどのくらい不足しているかを把握することが出発点です。
採用計画の策定
不足がある場合は、2026年7月に間に合うよう逆算して採用スケジュールを組みます。障害者雇用の採用活動は、通常の採用と比べて面接・職場実習・内定から就労開始まで2〜3ヶ月かかるケースも多く、早めの着手が不可欠です。
業務の切り出し
「どんな業務を担当してもらうか」を事前に整理しておくことが、採用成功のカギです。清掃・データ入力・資料整理・梱包作業など、障害の特性に合わせた業務の切り出しを検討しましょう。
受け入れ体制の整備
採用するだけでなく、定着させることも重要です。担当者(サポーター)の選定、相談しやすい環境づくり、合理的配慮の提供など、職場全体で受け入れる体制を整えておきましょう。ハローワークや地域障害者職業センターへの相談も積極的に活用してください。
毎年6月のロクイチ報告
毎年6月1日時点の障害者雇用状況を、ハローワークへ報告する義務があります(ロクイチ報告)。この報告を通じて自社の雇用率が正式に確認されるため、日頃から雇用状況を正確に把握・管理しておくことが大切です。
まとめ
障害者雇用は、法令を守るためだけの取り組みではありません。人手不足が続く現在、多様な人材の力を活かすことは、企業の持続的な成長にもつながります。「義務だから」ではなく、「共に働く職場をつくる」という視点で取り組むことで、組織全体の風土も変わっていきます。
2026年7月の施行まで、決して余裕があるわけではありません。まずは自社の現状確認から始めてみてください。
障害者雇用率の計算方法や採用計画の立て方、助成金の活用方法など、何からはじめればよいかわからない場合は、ぜひ一度Payroll Plus 社労士事務所にご相談ください。中小企業の実情に合わせて、わかりやすく丁寧にサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。