
障害者雇用に関する大きな変化は、すでに始まっています。2026年(令和8年)7月1日、民間企業に適用される障害者の法定雇用率が、2.5%から2.7%へ引き上げられて施行されました。
「うちはまだ大丈夫」と思っていた中小企業の経営者・人事担当者の方にこそ、読んでいただきたい内容です。今回の引き上げにより、これまで雇用義務のなかった企業も新たに対象となりました。採用・定着の準備には相応の時間が必要なため、未対応の場合は早急な現状把握と対応が必要です。
最終更新:2026年10月
この記事の結論(先に知りたい方はこちら)
- 2026年7月1日から、民間企業の法定雇用率は2.5%から2.7%に引き上げられました(施行済み)。
- 雇用義務が生じるのは常用労働者37.5人以上の企業です。従来は40.0人以上でした。
- 達成できない場合、常用労働者100人超の企業は不足1人につき月5万円の障害者雇用納付金を納めます。
- 逆に超過して雇用していると、調整金(月29,000円)・報奨金(月21,000円)を受けられます。
- まずは自社の常用雇用労働者数を正確に把握し、2.7%で再計算してください。すでに2.5%を達成していた企業でも、未達になるケースがあります。
目次
- 法定雇用率とは
- 2026年7月の引き上げで何が変わった?
- 自社の雇用義務数を確認しよう
- 障害者のカウント方法
- 達成できなかった場合のリスク
- 達成した場合に受けられる助成金
- 実務としてやるべきこと(未対応の場合は至急)
- よくある質問
1. 法定雇用率とは
障害者雇用促進法に基づき、一定規模以上の企業には、従業員に占める障害者の割合を法定雇用率以上にする義務が課されています。この対象となる「障害者」とは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っている方を指します。
法定雇用率はこれまでも段階的に引き上げられてきました。
| 時期 | 民間企業の法定雇用率 | 雇用義務が生じる企業規模 |
| 2021年3月〜 | 2.3% | 従業員43.5人以上 |
| 2024年4月〜 | 2.5% | 従業員40.0人以上 |
| 2026年7月〜 | 2.7% | 従業員37.5人以上 |
※令和8年7月1日から施行済み。雇用義務が生じるのは常用労働者37.5人以上の企業です。
2. 2026年7月の引き上げで何が変わった?
今回の改正のポイントは大きく2点です。
① 雇用率が0.2ポイント上がった
2.5%から2.7%へ引き上げられました。一見わずかな差に見えますが、たとえば従業員50人の企業では雇用義務の人数が「50 × 2.7% = 1.35 → 1人(小数点以下切り捨て)」となります。すでに2.5%を達成していた企業でも、2.7%では未達になるケースがあるため、必ず再計算が必要です。
② 対象となる企業の範囲が広がった
雇用義務が生じる従業員規模が「40.0人以上」から「37.5人以上」に変わりました。従業員数が38〜40人前後の企業は、今回の改正で初めて障害者雇用の義務対象になった可能性があります。「うちには関係ない」と思っていた企業が、今回から対象となったケースも少なくありません。
3. 自社の雇用義務数を確認しよう
自社が対象かどうか、何人の障害者を雇用すべきかを確認するためには、まず「常用雇用労働者数」を正確に把握する必要があります。カウントのルールは以下のとおりです。
- 週30時間以上の労働者 → 1人としてカウント
- 週20時間以上30時間未満の短時間労働者 → 0.5人としてカウント
- 週20時間未満の労働者 → カウントしない
正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も、1年以上継続して雇用されている(または見込まれる)場合は対象に含まれます。
【計算例】常用雇用労働者数が50人(正社員40人+週25時間パート20人)の場合
- 正社員40人 × 1 + パート20人 × 0.5 = 50人
- 雇用義務数 = 50 × 2.7% = 1.35 → 1人(小数点以下切り捨て)
常用雇用労働者数の合計が37.5人以上であれば、令和8年7月から雇用義務が生じています。まずは自社の実態をしっかり確認しましょう。
4. 障害者のカウント方法
雇用している障害者が何人として算定されるかも、正確に把握しておく必要があります。
- 週30時間以上の障害者 → 1人
- 重度の身体・知的障害者(週30時間以上)→ 2人としてカウント(ダブルカウント)
- 週20時間以上30時間未満の障害者 → 0.5人
- 精神障害者(週20〜30時間未満)→ 当分の間、1人として特例算定
- 週10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体・重度知的障害者 → 0.5人(2024年4月から算定可)
週10〜20時間の短時間雇用も算定できるようになったことで、勤務時間の調整がしやすくなっています。週20時間以上になると社会保険の加入対象にも関わってくるため、社会保険の適用についてもあわせてご確認ください。労働時間の正確な把握は、勤怠管理の記録のポイントでも解説しています。
5. 達成できなかった場合のリスク
法定雇用率を達成できていない企業には、いくつかのリスクが生じます。
障害者雇用納付金の支払い
常用労働者数が100人を超える企業で法定雇用率に満たない場合、不足人数1人あたり月額5万円の「障害者雇用納付金」を納める義務があります。100人以下の企業は現在この納付金の対象外ですが、段階的に対象が広がる見通しのため、今後の動向に注意が必要です。
行政指導と企業名公表
法定雇用率が著しく低い企業には、ハローワークから障害者雇入れ計画書の作成が命じられます。改善が見られない場合は、最終的に企業名が厚生労働省のウェブサイト等で公表される可能性があります。企業イメージへの影響はもちろん、採用活動や取引関係にも悪影響が及ぶことがあるため、軽視できません。
6. 達成した場合に受けられる助成金
未達成で納付金を払うだけでなく、達成就業には給付があります。自社がどちらに該当するかを確認しておきましょう。
| 制度 | 対象 | 金額 |
| 障害者雇用調整金 | 常用労働者100人超・超過達成 | 超過1人につき月額29,000円 |
| 報奨金 | 常用労働者100人以下・一定数超過達成 | 超過1人につき月額21,000円 |
障害者雇用の採用や設備投資には、ほかにも各種助成金があります。制度の要件や申請時期は年度ごとに異なるため、最新の情報を確認のうえ、計画的に活用してください。
7. 実務としてやるべきこと(未対応の場合は至急)
現状把握
まず自社の常用雇用労働者数と、現在雇用している障害者数を正確に確認します。雇用率を計算し、2.7%に対してどのくらい不足しているかを把握することが出発点です。
採用計画の策定
不足がある場合は、施行済みのため、至急スケジュールを組みます。障害者雇用の採用活動は、通常の採用と比べて面接・職場実習・内定から就労開始まで2〜3ヶ月かかるケースも多く、早めの着手が不可欠です。
業務の切り出し
「どんな業務を担当してもらうか」を事前に整理しておくことが、採用成功のカギです。清掃・データ入力・資料整理・梱包作業など、障害の特性に合わせた業務の切り出しを検討しましょう。
受け入れ体制の整備
採用するだけでなく、定着させることも重要です。担当者(サポーター)の選定、相談しやすい環境づくり、合理的配慮の提供など、職場全体で受け入れる体制を整えておきましょう。ハローワークや地域障害者職業センターへの相談も積極的に活用してください。
毎年6月のロクイチ報告
毎年6月1日時点の障害者雇用状況を、ハローワークへ報告する義務があります(ロクイチ報告)。施行後最初の6月1日は令和9年6月1日にあたり、この報告から2.7%基準での達成状況が確認されます。日頃から雇用状況を正確に把握・管理しておくことが大切です。採用や雇用契約の書面については、労働条件通知書と雇用契約書の違いもご参照ください。短時間で働く方の労務管理は、有給休暇の管理方法もあわせてご確認ください。
8. よくある質問
Q. 法定雇用率はいつから2.7%になりましたか?
A. 令和8年(2026年)7月1日からです。すでに施行されています。
Q. 何人の従業員がいる会社から義務が生じますか?
A. 常用労働者37.5人以上の企業です(従来は40.0人以上)。
Q. 納付金はいくらですか?
A. 常用労働者100人超の企業で、不足1人につき月額5万円です。100人以下の企業は現在対象外です。
Q. パートやアルバイトもカウントに含まれますか?
A. 含まれます。1年以上継続して雇用されている(または見込まれる)場合、週20〜30時間未満は0.5人、週30時間以上は1人としてカウントします。
Q. 障害者の人数はどう数えますか?
A. 週30時間以上は1人、重度の身体・知的障害者は2人、週20〜30時間未満は0.5人です。精神障害者は特例があります。
まとめ
障害者雇用は、法令を守るためだけの取り組みではありません。人手不足が続く現在、多様な人材の力を活かすことは、企業の持続的な成長にもつながります。「義務だから」ではなく、「共に働く職場をつくる」という視点で取り組むことで、組織全体の風土も変わっていきます。
2.7%はすでに施行済みです。未達成の企業は、雇入れ計画の作成を命じられる前に対応を始めましょう。まずは自社の現状確認からです。
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参考:厚生労働省「事業主の方へ(障害者雇用)」/独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度の概要」
本記事は2026年10月時点の情報に基づきます。最新の制度は、厚生労働省・ハローワークにご確認ください。