
採用してもすぐに辞めてしまう、優秀な人材ほど突然いなくなる——人手不足が続く中で、こんな悩みを抱える経営者・人事担当者の方は少なくありません。採用と同じか、それ以上に重要なのが「採用した人材をいかに定着させるか」です。
そして、退職の多くは「突然」ではなく、予兆があります。予兆に気づき、タイミングよく声をかけることができれば、引き留めにも、よりよい職場づくりにもつながります。
この記事では、退職が起きる背景を押さえたうえで、退職防止の取り組みと退職の申し出を受けたときの面談のポイントを、社労士の視点で整理して解説します。
最終更新:2026年10月
この記事の結論(先に知りたい方はこちら)
- 新規学卒就職者の3年以内離職率は、大学卒33.8%・高校卒37.9%です(厚生労働省)。
- 離職理由は「労働時間」から「納得感の欠如」へと重心が移っています。
- 退職は突然ではなく、業務への関与低下・コミュニケーションの減少などの予兆があります。
- 防止策の柱は①1on1 ②評価の納得感 ③入社直後のフォロー ④待遇・環境の見直しです。
- 退職の申し出を受けたら、感情的にならず、引き留めより「情報収集」に徹するのが原則です。
目次
1. なぜ今、退職者が増えているのか
まず、数字で状況を確認します。厚生労働省の調査では、就職後3年以内に離職する新規学卒就職者の割合は次のとおりです。
| 学歴 | 3年以内離職率 |
| 新規大学卒就職者 | 33.8% |
| 新規高校卒就職者 | 37.9% |
※ 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒業者)による数値です。学歴を問わず、3割を超える水準が続いています。
離職理由の重心が変わってきた
かつて主な離職理由だった「残業が多い」「労働時間が長い」という就業負荷への不満は、働き方改革の進展にともなって減少傾向にあります。代わって上位に浮かび上がってきたのが、「納得感の欠如」です。
- 上司の指示や考えに納得できない
- 評価に納得感がない
- 求められる成果が重すぎる
⚠ 注意:給与や休日を整えるだけでは、退職は防げない時代になっています。労働環境が改善されても、「納得できる職場かどうか」が問われるようになったということです。
2. 退職は「突然」ではなく「予兆がある」
「急に辞めると言われて驚いた」というケースでも、実際には本人の中で時間をかけて決断されています。上司が「まったく気づかなかった」と言う一方で、本人はサインを出し続けていた——そんなすれ違いが多くの職場で起きています。
退職の予兆として現れやすいサイン
| サイン | 具体的な現れ方 |
| 業務への関与が薄れる | ミスが増える、仕事を他人に押し付ける |
| コミュニケーションが減る | 昼食を一人で取る、雑談に加わらない |
| 勤怠の変化 | 有給休暇の取得が増える、遅刻・欠勤が増える |
| 生活パターンの変化 | 退社時間が急に早くなる、身だしなみに気を使い始める |
| 新しい役割の回避 | 新しいプロジェクトや会議への参加を避ける |
重要なのは、これらのサインに気づいて、早めに声をかけることです。気づいた時点で面談の機会を持てるかどうかが、退職防止の第一歩になります。
3. 退職防止の4つの取り組み
① 定期的な1on1ミーティングの実施
上司と部下が1対1で定期的に対話する1on1は、最も効果的な退職防止策の一つです。月1回・30分程度でも継続することで、状態や不満を早期に把握できます。
ただし、進捗確認で終わらせると意味がありません。大切なのは、業務の話ではなく「その人自身」の話を聞くことです。
1on1で聞くとよい質問の例
- 「最近、仕事の中で一番しんどいと感じていることは何ですか?」
- 「今の業務で、やりがいを感じる瞬間はありますか?」
- 「半年後・1年後、どんな仕事や役割にいたいですか?」
- 「職場の環境や人間関係で、気になっていることはありますか?」
⚠ 注意:アドバイスや評価をすぐにしないこと。まず「聞く」ことに徹すると、部下は本音を話しやすくなります。出た要望に誠実に対応すること(できない場合は理由を伝えること)が、信頼関係につながります。
② 評価への納得感を高める
1章で触れたとおり、離職理由として「評価への納得感のなさ」が目立っています。評価制度があっても、基準や根拠が伝わっていないことが原因です。
評価面談では、結果だけでなく「なぜその評価になったのか」「次にどう行動すれば評価が上がるのか」を具体的に伝えます。納得できない状態が続くと、モチベーションの低下だけでなく「自分は必要とされていない」という感覚につながり、退職のきっかけになります。
③ 入社直後のフォローを手厚くする
退職が最も多く発生するのは入社後1年以内、とくに最初の3〜6か月はギャップが起きやすい時期です。入社前に職場のリアルな姿(大変な面も含めて)を伝えておくこと、入社直後に何でも聞ける担当者を設けることが有効です。
「採用したら終わり」ではなく、入社後の支援こそが定着のカギです。
④ 職場環境・待遇の定期的な見直し
長時間労働・休日の少なさ・給与の低さといった待遇面は、以前より減ったとはいえ一定数あります。従業員満足度調査を定期的に実施し、課題を可視化しましょう。
また、令和8年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者に関する同一労働同一賃金のガイドライン(施行規則・告示)の改正が施行・適用されています。正社員と非正規を問わず「公平に扱われている」と感じられる職場をつくることが、全従業員の定着につながります。
4. 退職の申し出を受けたときの面談術
それでも退職の申し出を受けることはあります。このときの対応が、残る従業員の目にも映ります。
まず、感情的にならないこと
「急に何で?」「裏切りだ」といった反応は、相手を委縮させ、本音を聞き出せなくなります。まずは「話してくれてありがとう」という姿勢で臨みましょう。
面談で確認したいこと
- 退職を考えるようになったきっかけや理由
- 現在の業務や職場環境で不満に感じていたこと
- 改善できるとしたら、何があれば働き続けたいか
避けたい対応
| 避けたい対応 | 理由 |
| 頭ごなしに引き留める | 本音を聞けず、退職後の関係も悪化する |
| 感情に訴えて引き留める | 「頼むから辞めないでくれ」は相手を追い詰める |
| 責任を問う発言 | 「お前がいなくなったらどうするんだ」は信頼を損なう |
| その場で曖昧な条件提示 | 「給料を上げるから」は、後の運用で揉める原因になる |
⚠ 注意:退職の意向が固まっている場合は、引き留めより「情報収集」に徹しましょう。退職者の本音は、残る従業員のために組織を改善する貴重なヒントです。面談の内容は記録し、今後の職場改善に活かしてください。
退職が決まったあとの手続きは、自己都合退職と会社都合退職の違い、退職までの有給休暇の扱いは有給休暇の付与日数と管理方法の記事で解説しています。
5. よくある質問
Q. 1on1はどのくらいの頻度で行えばよいですか?
A. 月1回・30分程度から始めるのが現実的です。頻度や時間より、継続して実施することが効果につながります。
Q. 引き留めはしたほうがよいですか?
A. 意向が固まっている場合は、引き留めより情報収集に徹することをお勧めします。引き留める場合も、曖昧な条件提示は避けてください。
Q. 退職面談の内容は記録すべきですか?
A. 記録することをお勧めします。退職理由の傾向は、組織の改善に直結する情報です。個人が特定されない形で蓄積しましょう。
Q. 評価制度はどう見直せばよいですか?
A. まず評価基準が従業員に伝わっているかを確認してください。基準の明文化と、評価面談での根拠の説明が第一歩です。
Q. 早期離職を防ぐには何が有効ですか?
A. 入社前のリアルな情報提供と、入社直後に相談できる担当者を設けることが有効です。最初の3〜6か月のギャップを減らすことがポイントです。
6. まとめ
退職防止は、「辞めてから対処する」のではなく「辞める前に関係をつくる」ことが本質です。
- 退職には予兆がある。関与の低下・コミュニケーションの減少・勤怠の変化に気づく
- 防止策の柱は1on1・評価の納得感・入社直後のフォロー・待遇の見直し
- 離職理由は「労働時間」から「納得感」へ移っている
- 申し出を受けたら感情的にならず、引き留めより情報収集
人手不足の時代に「選ばれる職場」であり続けることは、採用力の強化にもつながります。今いる従業員を大切にすることが、経営の安定と成長を支える土台です。
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当事務所は、堺市(堺区・七道駅)を最寄りとして活動しており、給与計算代行やシステムのDX化に特化しています。北摂(摂津市・吹田市・茨木市など)の事業主様からのご相談も、フットワーク軽くお受けしています。
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参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒業者)/「同一労働同一賃金特集ページ(令和8年10月1日施行・適用)」
本記事は2026年10月時点の情報に基づきます。制度の適用や実務の取扱いは、労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。