
年末調整は、1年間に給与から源泉徴収した税額と、本来納めるべき年税額との過不足を精算する手続きです。従業員が書類を出す時期と、会社が締切を管理する時期が決まっているため、早めに段取りを確認しておくと安心です。
この記事では、年末調整のスケジュールと、令和8年分の変更点、会社が行う実務の流れを整理します。
最終更新:2026年10月9日
この記事の結論(先に知りたい方はこちら)
- 時期:実務は11月に書類を配布・回収し、12月の給与で税額を精算します。
- 令和8年分の変更:基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられ、扶養親族等の所得要件も変わります(令和8年12月1日施行)。
- 注意点:社会保険の扶養と税の扶養は判定基準が別なので、扶養の確認は分けて行います。
目次
- 年末調整はいつから始める?年間スケジュール
- 2026年(令和8年分)の主な変更点
- 会社が行う年末調整の実務手順
- つまずきやすいポイント|扶養の判定は社会保険と税で別
- 書類の提出遅れを防ぐ|WEB年末調整という選択
- まとめ|税務判断は税理士へ、扶養と給与計算は社労士へ
1. 年末調整はいつから始める?年間スケジュール
年末調整は、給与の支払者(会社)が、その年に源泉徴収した税額を集計し、1年分の所得税を計算し直して過不足を精算する手続きです。従業員が自分で行う確定申告とは別の手続きで、会社が行います。
実務は、書類の準備から提出まで、おおむね次の流れで進みます。
| 時期 | 会社が行うこと |
| 10月ごろ | その年の給与・賞与の集計を確認し、年末調整の段取りと書類の準備を始めます。 |
| 11月ごろ | 扶養控除等申告書、基礎控除申告書、保険料控除申告書などを従業員へ配布し、回収します。 |
| 12月 | 年税額を計算し、12月の給与で過不足を精算します。 |
| 翌年1月 | 源泉徴収票を従業員へ交付し、源泉徴収票や法定調書合計表を税務署へ提出します(1月31日まで)。 |
扶養控除等申告書の提出期限
扶養控除等申告書は、その年の最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出する決まりです。新しく入社した従業員には、初回の給与を支払う前に提出してもらいます。すでに勤務している従業員は、前年に提出した内容が引き継がれます。
年末調整の対象になる人
12月に行う年末調整の対象は、1年を通じて勤務している人や、年の途中で就職して年末まで勤務している人です。扶養控除等申告書を年末調整を行う日までに提出していることが前提になります。
ただし、1年間に支払うことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人と、災害減免法により源泉徴収の徴収猶予や還付を受けた人は、対象から除かれます。
年の途中で退職した人の扱い
年の途中で退職した人は、原則として12月の年末調整の対象にはなりません。ただし、次のいずれかに当てはまる人は、退職するときに行う年末調整の対象になります。
- 海外の支店等への転勤などにより非居住者となった人
- 死亡により退職した人
- 著しい心身の障害のため退職した人(退職後に再就職して給与を受け取る見込みのある人を除く)
- 12月に支給される給与の支払を受けた後に退職した人
- パートタイムとして働いている人などで、その年に支払を受ける給与の総額が136万円以下の人(退職後に同じ年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人を除く)
たとえば、12月10日に支給される給与を受け取った後に12月15日に退職した人は、4つ目に当てはまるため対象になります。退職日が12月の途中であっても、12月に支給される給与の支払を受けていれば対象です。
一方、これらに当てはまらない人が年の途中で退職した場合は、会社は年末調整を行いません。会社は源泉徴収票を交付し、従業員本人が確定申告を行います。
12月の給与で精算するため、11月中に書類を回収し終える段取りが重要です。
2. 2026年(令和8年分)の主な変更点
令和8年度税制改正により、令和8年分以後の所得税について、基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられ、あわせて扶養親族等の所得要件が改正されました。施行日は令和8年12月1日です。
| 改正項目 | 内容 |
| 基礎控除の引上げ | 本則の基礎控除額が58万円から62万円に引き上げられました。合計所得金額に応じた加算額も見直されています。 |
| 給与所得控除の最低保障額 | 最低保障額が65万円から74万円に引き上げられました。給与収入190万円以下の場合は74万円となります。 |
| 扶養親族等の所得要件 | 扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が引き上げられました(下表)。 |
扶養親族等の所得要件はこう変わる
| 扶養親族等の区分 | 改正前 | 改正後 |
| 扶養親族・同一生計配偶者 | 合計所得58万円以下 (給与収入123万円以下) |
合計所得62万円以下 (給与収入136万円以下) |
| 特定親族 | 58万円超123万円以下 (123万円超188万円以下) |
62万円超123万円以下 (136万円超197万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 58万円超133万円以下 (123万円超201万5,999円以下) |
62万円超133万円以下 (136万円超207万円以下) |
| 勤労学生 | 85万円以下 (150万円以下) |
89万円以下 (163万円以下) |
たとえば、これまで収入が基準を少し超えて扶養に入れなかった親族が、令和8年分から扶養控除の対象になることがあります。従業員から申告があった場合は、要件を確認して反映します。
所得要件の内容は、所得税と健康保険の扶養要件の違いの記事でも整理しています。
毎月の源泉徴収と、年末調整での精算
令和8年分の毎月の給与の源泉徴収は、令和8年1月から使っている源泉徴収税額表で計算します。この税額表は、令和7年度税制改正を反映したものです。
今回の改正による基礎控除と給与所得控除の引上げは、令和8年12月に行う年末調整で反映します。年末調整で、改正後の基礎控除額と改正後の給与所得控除後の金額の表をもとに1年間の税額を計算し、毎月徴収した税額との過不足を精算します。
源泉徴収税額表そのものが変わるのは令和9年1月からです。令和9年1月1日以後に支払う給与から、改正後の税額表を使います。
まとめると、令和8年分は、毎月の税額は今の税額表のまま計算し、12月の年末調整で1年分を計算し直して差額を精算する、という流れです。
改正の概要は、国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」で確認できます。
3. 会社が行う年末調整の実務手順
年末調整の実務は、次の順で進めます。
- 年末調整の対象になる従業員を確認する
- 申告書を準備して配布する
- 提出された書類を回収し、内容を確認する
- 年税額を計算し、12月の給与で過不足を精算する
- 源泉徴収票を従業員へ交付する
- 源泉徴収票や法定調書合計表を税務署へ提出する
令和8年分の申告書は様式が変わっている
改正に伴い、基礎控除申告書などの様式が前年分から変更されています。令和8年分の年末調整では、令和8年12月以後に使用する新しい様式を使います。前年分の様式が手元に残っている場合は、間違えないよう注意してください。
従業員から集める主な書類
従業員から集める主な書類は、扶養控除等申告書、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、保険料控除申告書などです。生命保険料控除や地震保険料控除を受ける場合は、控除証明書の添付が必要です。
年税額を計算した結果、還付が生じた場合は12月の給与で還付し、不足が生じた場合は12月の給与から控除します。
4. つまずきやすいポイント|扶養の判定は社会保険と税で別
年末調整の時期に質問が多いのが、扶養の判定です。ここで押さえておきたいのは、税の扶養と社会保険の扶養は、基準がまったく別だという点です。
| 項目 | 税の扶養(扶養控除) | 社会保険の扶養(被扶養者) |
| 判断する期間 | その年の1月1日から12月31日までの実際の収入で判断します。 | 今後1年間の収入見込みで判断します。 |
| 主な基準 | 合計所得金額(扶養親族は62万円以下) | 年収130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満) |
| 主な手続き | 扶養控除等申告書 | 被扶養者異動届 |
年末調整の書類を確認していて、社会保険の扶養から外れていることに気づくケースがあります。逆に、税の扶養には入れても、社会保険の扶養には入れないこともあります。扶養控除等申告書の内容と、健康保険の被扶養者の認定は、それぞれ別に確認してください。
社会保険の扶養の基準は、社会保険の「130万円の壁」の記事で詳しく解説しています。
5. 書類の提出遅れを防ぐ|WEB年末調整という選択
年末調整の実務で最も多い悩みが、従業員が書類を出さない、締切に遅れるというものです。紙で回収する運用では、郵送でのやり取りだと送付から到着までにラグが出て、締切ぎりぎりまで確定できないことがあります。
WEB年末調整のメリット
WEB年末調整なら、従業員がスマートフォンやパソコンから申告でき、提出状況をその場で確認できます。未提出者への声かけもしやすく、回収のラグを減らせます。集計の手間も減り、締切の遅れを防ぎやすくなります。
給与計算システムと併用する
WEB年末調整は、給与計算システムと併用すると、申告内容の反映と集計がなめらかになります。どのシステムを使い、どこまで自動で反映するかを決めておくことが、設定と導入の要点です。
国税庁が提供する年調ソフトを使い、申告書を作成してe-Tax等で提出する方法もあります。運用の全体像は、国税庁「年末調整のしかた」で確認できます。
給与計算の運用そのものを整理したい場合は、給与計算のアウトソーシングの記事も参考にしてください。
6. まとめ|税務判断は税理士へ、扶養と給与計算は社労士へ
最後に、この記事の要点を整理します。
- 年末調整は、11月に書類を配布・回収し、12月の給与で税額を精算します。
- 令和8年分は基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられ、扶養親族等の所得要件も変わります(令和8年12月1日施行)。
- 税の扶養と社会保険の扶養は判定基準が別なので、扶養の確認は分けて行います。
年末調整のうち、税務判断を伴う部分は税理士の業務です。税務上の最終的な判断は、税理士または税務署にご確認ください。
一方で、社会保険の被扶養者の判定、入退社に伴う社会保険の資格取得・喪失の手続き、毎月の給与計算は、社会保険労務士の業務です。書類の回収を効率化したい場合の、給与計算システムと併用したWEB年末調整の設定・導入も、当事務所で対応しています。
年末調整の準備と社会保険のご相談
Payroll Plus社労士事務所では、社会保険の被扶養者の判定や入退社の資格取得・喪失の手続き、給与計算、給与計算システムと併用したWEB年末調整の設定・導入のご相談に対応しています。堺市堺区・七道駅を最寄りとし、北摂地域の事業主様もご相談いただけます。
「書類の回収を効率化したい」「扶養の判定を確認したい」という方は、初回30分の無料相談をご利用ください。
本記事は2026年10月9日時点の公表情報に基づく一般的な解説です。税務上の個別の判断は、税理士または税務署にご確認ください。