
「課長や店長になったら、残業代は不要」とは限りません。社内の管理職と、労働基準法上の管理監督者は別のものです。
この記事では、経営者・人事労務担当者の方に向けて、実態を確認する判断基準と、給与・勤怠管理で見落としやすい点を整理します。
最終更新:2026年10月5日
この記事の結論(先に知りたい方はこちら)
- 管理監督者かどうかは、役職名ではなく権限・働き方・待遇などの実態を総合して判断します。
- 該当しても、深夜割増賃金・有給休暇・健康確保のための時間把握は必要です。
- 該当しない場合は、未払いの確認と、規程・勤怠・給与の見直しを進めます。
目次
1. 管理監督者とは
管理監督者とは、労働条件の決定その他の労務管理について、経営者と一体的な立場にある労働者です。重要な職務・責任と権限を持ち、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない立場にあることが求められます。
労働基準法第41条第2号に該当すると、労働時間・休憩・休日に関する規定は適用されません。ただし、労働基準法全体の対象から外れるわけではありません。
就業規則に「課長以上を管理監督者とする」と書いたり、本人が残業代なしの条件に同意したりしても、それだけで該当することにはなりません。会社が与えた権限と、実際の勤務・処遇を確認する必要があります。
2. 実態を確認する判断基準
次の観点を組み合わせて判断します。役職手当がある、部下がいるといった一つの事情だけでは決まりません。
| 観点 | 実際に確認すること |
| 職務・責任と権限 | 労働条件や労務管理の重要事項を判断する立場か、採用・人事評価・配置等にどのような権限と実質的な関与があるか。 |
| 勤務態様 | 出退勤を自分で判断できるか、上司の指示や人員不足で勤務時間が固定されていないか。 |
| 賃金等の待遇 | 基本給・役職手当・賞与が責任に見合うか、残業代が支払われないことも踏まえて一般社員より相応に優遇されているか。 |
例えば、上司の指示を部下に伝えるだけで、重要事項には毎回決裁が必要な場合は、実質的な権限を慎重に確認します。待遇も月給だけでなく、年間の賃金総額や実際の労働時間を踏まえて比較します。
「年収がいくら以上なら該当する」という一律の基準はありません。判断項目と店長向けの具体例は、労働局の解説資料(PDF・53~55ページ)でも確認できます。
3. 店長・課長の判断で注意したい例
店長や課長でも、該当する場合としない場合があります。次は、管理監督者性を否定する方向に働く事情の例です。
- 権限が乏しい:採用や人事評価に実質的に関与せず、本部や上司の決定を実行するだけです。
- 時間の裁量が乏しい:欠員を埋める接客・作業が勤務の大半を占め、開店から閉店まで働かざるを得ません。
- 待遇が不十分:手当を含めても、残業代を受け取る一般社員と年間の賃金総額が同程度以下です。
多店舗展開する小売業・飲食業等の店長について、厚生労働省は、遅刻・早退による減給の制裁や人事評価上の不利益も、管理監督者性を否定する重要な要素としています。
反対に、こうした事情がないから直ちに該当するわけでもありません。「店長だから対象外」「手当を増やせば対象になる」と一律に扱わず、経営者から委ねられた職務・責任と権限を含めて確認します。
4. 残業代・深夜割増・有休の扱い
実態として管理監督者に該当する場合の扱いは、次のとおりです。
| 項目 | 取扱い |
| 時間外・休日の割増 | 労働基準法上の支払義務はありません。 |
| 深夜の割増 | 原則22時~翌5時の労働に、通常の賃金の25%以上の割増部分を支払います(第37条第4項)。 |
| 年次有給休暇 | 付与・取得の規定が適用され、年10日以上の法定付与を受ける人は年5日取得の対象です。 |
会社の休日・手当の約束は別に確認する
法定休日は法律上の休日であり、会社が定めた休日すべてと同じではありません。管理監督者でない人の休日勤務を再計算する際は、法定休日労働か、週の労働時間などから時間外労働になるかを区別します。
また、管理監督者でも、就業規則や労働契約で休日や休日勤務手当を約束していれば、その内容を確認します。法律上の適用除外だけを理由に、社内の約束もなくなるわけではありません。
有休の付与日・取得期限の整理は、有給休暇の付与と年5日取得の管理もご覧ください。
5. 勤怠記録と健康確保は必要
管理監督者にも、健康確保のための労働時間の状況を把握する義務があります(労働安全衛生法第66条の8の3)。原則として打刻やパソコンの使用記録等の客観的な方法で把握し、その記録を作成して3年間保存するための措置を講じます。
記録を取ることと、出退勤を厳格に拘束することは別です。タイムカードを使っているだけで管理監督者性が否定されるわけではありません。深夜労働の集計にも記録が必要です。
長時間勤務がある場合は、疲労の状況や本人の申出など、法定の要件に応じて医師の面接指導と必要な事後措置を行います。実務上は、欠員補充、業務分担、休める日の確保も併せて見直しましょう。
記録方法の点検には、勤怠管理で押さえたい記録のポイントが参考になります。
6. 名ばかり管理職が疑われる場合の対応
実態は管理監督者ではないのに残業代を支払っていなければ、未払い賃金の請求や労働基準監督署の是正指導につながるおそれがあります。今後の扱いだけでなく、過去分も確認します。
- 実態を調べる:本人・上司に業務と権限を確認し、職務分掌、決裁記録、勤務表、給与・賞与の資料と照合します。
- 未払いを確認する:勤怠記録等から労働時間を整理し、適用される制度に沿って必要な賃金と支払済額を比較して、不足分を精算します。
- 規程と処理を直す:対象範囲、手当の性質、深夜割増、勤怠・有休の設定を整え、該当しない人は36協定・上限規制等も確認します。
役職手当を払っていたからといって、当然に未払い残業代へ充当できるとは限りません。固定残業代として扱う場合の区分と精算は、固定残業代の実務上の留意点をご確認ください。
職務・待遇を記録して異動時などに再点検することは、実務上の推奨です。残業代をなくす目的で肩書きだけを変えず、実際に任せる仕事と処遇から設計しましょう。
時間把握と健康確保の法的な位置付けは、厚生労働省の管理監督者に関する資料(PDF・2~3ページ)に整理されています。
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本記事は2026年10月5日時点の公表情報に基づく一般的な解説です。個別の該当性や精算方法は、職務・勤務・賃金の実態に応じて確認してください。