副業を認めるメリットと運用のコツ|届出・労働時間・就業規則

副業を認めることは、社員のスキルアップや働き方の選択肢につながります。一方で、会社には労働時間や健康状態、情報漏洩への対応も求められます。

この記事では、民間企業が副業を認める際に押さえたいポイントを、届出・給与計算・就業規則の順に整理します。

最終更新:2026年10月5日

 

この記事の結論(先に知りたい方はこちら)

  • メリット:社外で得た知識・経験を、本業に生かせる可能性があります。
  • 運用のコツ:届出、勤務時間・体調の確認、秘密保持・競業のルールを整えます。
  • 給与計算の注意:他社に雇用される副業では、時間の通算と割増賃金の確認が必要になる場合があります。

 


 

目次

  1. 副業を認めるメリット
  2. 開始前に届け出てもらうこと
  3. 労働時間と割増賃金の扱い
  4. 健康・秘密保持・競業への対応
  5. 就業規則と運用の整え方

 


 

1. 副業を認めるメリット

厚生労働省のガイドラインは、知識・スキルの獲得、人材の獲得・流出防止、事業機会の拡大などを企業側のメリットとして挙げています。

  • 社員の成長:自社では経験できない仕事や進め方に触れられます。
  • 働き方の選択肢:在籍したまま別の仕事に挑戦できます。
  • 採用・定着:柔軟な働き方を希望する人に、自社の方針を伝えられます。

ただし、認めるだけで採用や業績が改善するわけではありません。本人の希望と本業への影響を確認し、会社が管理できる仕組みを用意することが前提です。

 


 

2. 開始前に届け出てもらうこと

副業を把握する方法として、届出制などを設けることが望ましいとされています。届出制・許可制のどちらかが法律で一律に義務付けられているわけではありません。

届出書には、次の項目を設けると確認しやすくなります。

項目 確認する内容
副業先と業務 どこで、どのような仕事をするか。
契約と働き方 雇用か業務委託か、実際にどう働くか。
契約日と勤務予定 契約の先後、曜日・時間、残業の見込み。
変更時の連絡 勤務の増加、契約変更、副業終了の報告方法。

副業人材を自社で雇う場合も、労働条件の明示が必要です。書面の違いは、労働条件通知書と雇用契約書の記事をご覧ください。

 


 

3. 労働時間と割増賃金の扱い

雇用と業務委託では扱いが違う

両社で労働基準法の労働時間規制が適用される場合、事業主が違っても労働時間を通算します。一方、実態として独立した事業者が行う業務委託は、その通算の対象ではありません。

ただし、「業務委託」という契約名だけでは決まりません。指揮監督など、働き方の実態から労働者に当たるかを判断します。

割増賃金は、契約と労働の順序で確認する

原則的な通算は、次の順序で行います。

  1. 所定労働時間を、契約を締結した順に通算します。
  2. そのうえで、所定外労働時間を、実際に行われた順に通算します。

通常の労働時間制では、原則1日8時間・1週40時間を超えた部分のうち、自社で働かせた時間について割増賃金を支払います。

例えば、先に契約した会社で所定8時間、後から契約した会社で同じ日に所定2時間働く場合、後の会社の2時間は時間外労働になります。反対に、本業側の残業に割増賃金が必要になることもあり、副業先だけが負担するとは限りません。

自社の労働が法定時間外となる場合は、必要な36協定も確認します。一般の上限規制では、時間外・休日労働の合計について単月100時間未満、2~6か月の各平均80時間以内を他社分と通算します。労働時間制度や業務による特例は個別に確認してください。

固定残業代がある場合も不足額の確認が必要です。固定残業代の計算と精算もご確認ください。

管理の負担を軽減する「管理モデル」

厚生労働省は、先に契約した会社の法定外労働時間と、後の会社の労働時間全体に、あらかじめ上限を設ける方法も示しています。

両社と本人が導入に応じ、各社の36協定や合計時間の上限を守ることが前提です。後の会社は労働時間全体に割増賃金を支払い、条件を満たせば他社の実労働時間を把握せずに通算管理を行えます。

設定例と導入方法は、厚生労働省の管理モデル解説資料(PDF)で確認できます。

 


 

4. 健康・秘密保持・競業への対応

時間通算の対象外でも、疲労には配慮する

業務委託の副業でも、睡眠不足や疲労が本業に影響することがあります。勤務の増加や体調不良を相談できる窓口を決め、必要に応じて残業や副業時間の見直しを話し合います。

各社の安全配慮義務は、「本人の自己責任」という誓約でなくなるものではありません。法令に基づく健康診断や面接指導の対象判定は、割増賃金の通算ルールとは別に確認します。

禁止・制限は、具体的な支障で判断する

厚生労働省は、原則として副業を認める方向での検討が適当としています。ただし、次のような場合には禁止・制限を検討できます。

  • 疲労などにより、本業の労務提供に支障がある。
  • 企業秘密が漏洩する。
  • 会社の名誉・信用を損なうなど、信頼関係を破壊する。
  • 競業により会社の利益を害する。

同業という理由だけで禁止せず、担当業務や情報への接触などを確認します。自社の顧客情報を持ち出さないことと、副業先の秘密を持ち込まないことの両方をルールにしましょう。

 


 

5. 就業規則と運用の整え方

就業規則には、届出の窓口、判断基準、実績・変更報告、禁止・制限の条件を整理します。許可制なら、許可する基準も明確にしてください。

開始後は、自社の勤怠と他社分の申告を分けて管理します。報告の頻度や締切は、給与計算と上限管理に支障がないように決めます。自社の記録方法は、勤怠管理の記録ポイントも参考になります。

副業の相談や申告だけを理由に、不利益な取扱いをしないことも大切です。規程の変更時は、必要な意見聴取・届出・周知を行います。

 


 

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参考資料

厚生労働省:副業・兼業のガイドライン・届出様式例

本記事は2026年10月5日時点の公表情報に基づく一般的な解説です。実際の対応は、契約・勤務の実態と自社の労働時間制度に応じて確認してください。