カスハラ対策が義務化へ 2026年に企業がやるべきこと

近年、顧客や利用者から従業員に対する理不尽な言動、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻な社会問題として注目されています。

厚生労働省の調査によると、過去3年間に顧客等からのカスハラ相談があったと回答した企業の割合は27.9%にのぼり、前回調査から8.4ポイントも増加しています。具体的には「継続的・執拗な言動」「威圧的な言動」「精神的な攻撃」といった行為が多く報告されており、現場で働く従業員への影響は決して軽視できません。

こうした状況を受け、2025年6月に改正労働施策総合推進法が成立・公布され、2026年10月1日からカスハラ対策が事業主の法的義務となります。


 

カスタマーハラスメントとは

法律上、カスハラとは以下の3つの要素をすべて満たす行為を指します。

① 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う
② 社会通念上許容される範囲を超えた言動により
③ 労働者の就業環境を害すること

具体的には次のような行為が該当しうると考えられています。

  • 長時間にわたるクレーム電話・居座り
  • 土下座の要求や暴言・脅し
  • SNSへの悪意ある投稿や個人への誹謗中傷
  • 過剰・不当な金銭要求や謝罪要求
  • 特定の従業員への執拗な付きまとい

なお、正当なクレームや業務上の指摘はカスハラには該当しませんあくまでも「社会通念上許容される範囲を超えた言動」がポイントです。


 

義務化のポイント:誰が対象?

今回の改正で特に注意が必要なのは、従業員が1人でもいるすべての企業が対象という点です。大企業だけでなく、中小企業・小規模事業者にも例外なく適用されます。パワハラ防止法の義務化の際は中小企業に経過措置がありましたが、今回はその猶予がありません。

対策を怠った事業主には、行政による報告徴求・助言・指導・勧告、そして企業名の公表という段階的な対応が行われます。直ちに罰金などの刑事罰が科されるわけではありませんが、企業名の公表はブランドや採用力への影響が大きく、対応を先送りにするリスクは決して小さくありません。


 

2026年に企業がやるべきこと

指針の内容をもとに、企業が取り組むべき措置を整理すると、大きく「事前の準備」と「発生時の対応」に分けられます。

【事前の準備】

① 基本方針の策定と周知
「当社はカスハラから従業員を守る」という会社としての姿勢を明文化し、就業規則への記載や社内掲示・研修などで全従業員に周知します。経営トップが明確なメッセージを発信することが、現場の安心感につながります。

② 相談窓口の整備
従業員がカスハラ被害を相談しやすい窓口を設置します。内部窓口だけでなく、外部の相談機関の活用も選択肢のひとつです。相談者のプライバシー保護や、相談したことによる不利益取り扱いの禁止についても合わせて周知することが重要です。

③ 対応マニュアルの作成
カスハラが発生した際に現場が迷わず動けるよう、対応フローや判断基準を記したマニュアルを整備します。電話・対面・SNSなど接触経路ごとに対応を整理しておくと実務に役立ちます。

④ 従業員への教育・研修
カスハラの定義や具体的な対応方法について、定期的な研修を実施します。管理職向けには、部下からの相談を受けたときの対応方法も含めると効果的です。

【発生時の対応】

⑤ 事実確認と適切な対処
カスハラが発生した際は、事実関係を正確に確認したうえで、組織として毅然と対応します。個人任せにせず、必要に応じて複数人対応や記録を行うことが重要です。

⑥ 従業員へのケアと再発防止
被害を受けた従業員に対して、心理的なフォローや業務の調整など適切な配慮を行います。そのうえで、同様の事案が繰り返されないよう再発防止策を講じます。


 

早めの準備が重要な理由

2026年10月まで、まだ時間があると思われるかもしれません。しかし、就業規則の改定・マニュアルの作成・研修の実施・相談窓口の整備と運用テストまでを含めると、実務上の準備期間は思いのほか短くなります。特に、カスハラ対応の経験が少ない中小企業ほど、早めに現状を整理し、体制づくりに着手することが大切です。

「対応する仕組みがある会社」と「個人の忍耐に頼るだけの会社」では、従業員の安心感も、採用での競争力も、大きく差が開いていきます。

カスハラ対策の義務化への対応や就業規則の整備、社内研修の実施など、何からはじめればよいかわからないという場合は、ぜひ一度Payroll Plus 社労士事務所にご相談ください。貴社の状況に合わせて、具体的な対応をわかりやすくご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。