自己都合退職と会社都合退職 従業員と会社に与える影響の違い

従業員が退職するとき、「自己都合」か「会社都合」かという区分は、退職する従業員にとっても、会社にとっても、大きな意味を持ちます。

「どちらでも同じではないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は雇用保険(失業給付)の受給条件や、会社側の助成金への影響など、さまざまな点で違いが生じます。退職の区分を正しく理解していないと、思わぬトラブルや不利益につながることもあります。今回は、両者の違いと実務上の注意点をわかりやすく解説します。


 

自己都合退職と会社都合退職の違い

自己都合退職とは

自己都合退職とは、従業員本人の意思によって退職する場合を指します。一身上の都合など、退職の理由は問いませんが、「本人が自ら退職を申し出た」という点が基準です。

会社都合退職とは

会社都合退職とは、会社側の事情によって退職となる場合を指します。具体的には以下のようなケースが該当します。

・会社の経営悪化による人員削減(リストラ)

事業所の閉鎖・縮小 ・会社からの退職勧奨(会社側から退職を促した場合)

解雇(懲戒解雇を除く)

退職勧奨とは、会社が従業員に対して「退職してほしい」と働きかけることです。本人が了承して退職した場合でも、会社からの働きかけが起点になっているため、会社都合退職として扱われます。「話し合いの結果、本人が納得して辞めた」としても、会社都合の扱いになる点には注意が必要です。


 

従業員への影響:雇用保険(失業給付)の受給条件が大きく変わる

退職区分が従業員に最も影響するのは、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)の受給条件です。主な違いは以下のとおりです。

① 給付制限(待機期間)の有無

自己都合退職の場合、ハローワークへの申請後、7日間の待機期間に加えて、原則1か月間の給付制限期間があります。つまり、すぐには給付を受けられません。

一方、会社都合退職の場合は、7日間の待機期間のみで給付制限がなく、早期に受給を開始できます。

② 受給資格を得るための被保険者期間

自己都合退職では、退職前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。

会社都合退職では、退職前の1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格が得られます。在職期間が短い方にとっては、会社都合退職のほうが受給しやすい条件になります。

③ 給付日数

会社都合退職(特定受給資格者)は、自己都合退職と比べて給付日数が多く設定されており、年齢や被保険者期間によっては自己都合退職の倍近くになるケースもあります。


 

会社への影響:助成金の受給制限に注意

退職区分は、従業員だけでなく会社側にも影響を及ぼします。特に注意が必要なのが、雇用関係の助成金です。

厚生労働省が所管する多くの助成金では、「会社都合退職者を一定期間内に出した場合、助成金の申請ができない」という制限が設けられています。具体的には、解雇や退職勧奨による離職者を出した日の翌日から起算して、一定期間(助成金の種類によって異なりますが、6か月間が多い)は申請が制限されます。

たとえば、人材確保等支援助成金やキャリアアップ助成金など、中小企業が活用しやすい助成金でも同様の制限があります。「経営が苦しくなったのでリストラしつつ、助成金も受けたい」という状況は、要件を満たさない可能性が高いため、注意が必要です。


 

「自己都合か会社都合か」でよく起きるトラブル

① 退職勧奨なのに「自己都合」で処理してしまった

会社から退職を勧め、本人が了承した場合でも、それは退職勧奨=会社都合退職です。それにもかかわらず、離職票に「自己都合」と記載してしまうと、元従業員が不利益を受けるだけでなく、後から事実と異なる記載として問題になることがあります。離職票の記載内容は、ハローワークでも確認されます。

② 「合意退職」の扱いを誤った

「双方が合意した」という形での退職は、状況によって自己都合にも会社都合にもなりえます。会社から退職を促した経緯があれば、たとえ本人が署名した退職届があったとしても、ハローワークの判断で会社都合と認定されるケースがあります。退職の経緯を正確に把握し、適切に処理することが重要です。

③ 離職票の交付が遅れた・交付しなかった

退職した従業員が雇用保険の給付を受けるためには、離職票が必要です。「本人から申し出がなかったから出さなかった」という対応は認められません。退職者が離職票を必要としない旨を明示した場合を除き、離職票は速やかに交付する義務があります。


 

退職処理で会社が確認すべきこと

退職が発生したとき、会社側でやるべき手続きと確認事項をまとめます。

・退職理由を正確に確認し、自己都合・会社都合のどちらに該当するかを判断する

・ハローワークへの雇用保険被保険者資格喪失届を、退職日の翌日から10日以内に提出する

・離職票(離職票-1・離職票-2)を速やかに作成・交付する

会社都合の場合、助成金受給への影響がないか確認する


 

まとめ

自己都合退職と会社都合退職の違いは、退職する従業員の生活保障(失業給付の受給条件)に直結するだけでなく、会社側の助成金受給にも関わる重要な区分です。「どちらでも大差ない」と思っていると、後からトラブルや損失につながることがあります。

退職者が出るたびに「これは自己都合?会社都合?」と迷うような場合は、退職処理のフローを整備しておくことをおすすめします。判断が難しいケースも多いため、不安があれば早めに専門家に相談することが得策です。


 

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