
「タイムカードは押させているから大丈夫」そう思っている経営者・人事担当者の方は多いのではないでしょうか。しかし、タイムカードや勤怠管理システムを導入しているだけでは十分とは言えません。記録の方法や管理の仕方によっては、残業代トラブルや労働基準監督署からの是正勧告につながるケースもあります。
今回は、勤怠記録において押さえておくべき基本的なルールと、現場でよく見かける問題点をわかりやすく解説します。
なぜ勤怠記録が重要なのか
労働基準法では、使用者(会社)は労働者の労働時間を適切に把握・管理する義務を負っています。厚生労働省のガイドライン(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)でも、タイムカードや勤怠管理システムなどの客観的な記録をもとに労働時間を把握することが原則とされています。
感覚や申告だけで管理していた場合、労使間でトラブルが起きたときに会社側が適切な反論をできなくなるリスクがあります。「記録はある」だけでなく、「正確な記録がある」状態を整えておくことが重要です。
押さえておくべき記録のポイント
① 始業・終業時刻を客観的に記録する
勤怠記録の基本は、従業員が実際に働き始めた時刻と、働き終えた時刻を客観的に記録することです。
タイムカードの打刻、ICカードの入退室記録、パソコンのログイン・ログアウト時刻など、本人以外の手が加わりにくい方法での記録が望ましいとされています。「従業員の自己申告のみ」という管理方法は、それだけでは客観的な記録とはみなされにくく、ガイドライン上も自己申告を採用する場合は別途適正把握のための措置が求められています。
② 休憩時間を正確に記録する
労働時間の計算では、休憩時間を差し引く必要があります。「12時から1時間休憩」と一律に設定しているだけで、実態を記録していない会社は少なくありません。
しかし、繁忙時に休憩が取れなかった場合や、休憩中に業務対応をしていた場合は、その時間も労働時間として扱わなければなりません。休憩の実態が記録に残っていないと、後から「休憩が取れていなかった」と主張された際に会社側が反論しにくくなります。
③ 時間外労働・深夜労働・休日労働を区別して記録する
残業代(割増賃金)の計算には、法定時間外労働(25%以上)・休日労働(35%以上)・深夜労働(22時〜翌5時、25%以上)の区別が必要です。これらを区別せずに「時間外」とまとめて記録していると、割増率の適用を誤るリスクがあります。
勤怠管理システムを使っている場合でも、設定が正しく行われているかどうかを確認することが大切です。システムを導入したからといって、自動的に正確な計算が行われているとは限りません。
④ 直行・直帰・在宅勤務の記録方法を明確にする
営業職や在宅勤務が多い職場では、オフィスへの出勤がない日の勤怠記録が曖昧になりがちです。「だいたいこのくらい働いた」という感覚での管理は、労働時間の適正把握とはいえません。
直行・直帰の場合はメールやチャットツールでの業務開始・終了の報告、在宅勤務の場合はシステムへの打刻や業務日報の記録など、オフィス外でも客観的に確認できる記録方法を整備しておくことが必要です。
⑤ 勤怠記録の保存期間を守る
労働基準法では、労働者名簿・賃金台帳とともに、出勤簿(タイムカード等)を一定期間保存することが義務付けられています。保存期間は、令和2年の法改正により5年間(当面の間は3年間)とされています。
「古い記録は捨てている」という会社では、万が一トラブルが起きた際に証拠となる記録が残っておらず、会社側が不利な立場に置かれることがあります。データで管理している場合も、バックアップ体制を含めて確認しておきましょう。
よくある問題とその落とし穴
①タイムカードの打刻と実際の労働時間がズレている
「打刻は定時でしているが、実際はその後も働いている」という状況は、会社が把握していなくても問題になりえます。上司が黙認していた、業務指示があったにもかかわらず記録がないといった場合、未払い残業代として請求されるリスクがあります。
打刻後の残業が常態化しているようであれば、運用ルールの見直しと記録方法の徹底が必要です。
②管理職の勤怠記録を取っていない
「管理監督者だから残業代は不要」と考えて、管理職の勤怠記録を取っていない会社があります。しかし、労働基準法上の「管理監督者」として認められるためには、経営者と一体的な立場での業務遂行、労働時間の自由裁量、相応の処遇など、厳格な要件を満たす必要があります。
役職名が「課長」「部長」であるだけでは管理監督者とはみなされないケースも多く、実態が伴っていない場合は残業代の支払いが必要になります。なお、管理監督者であっても深夜労働に対する割増賃金の支払い義務は残り、健康管理の観点からも労働時間の把握は求められています。
③勤怠データを給与計算に正しく反映できていない
勤怠管理システムと給与計算システムが連携していない場合、データの転記ミスが起きやすくなります。「システムには記録があるのに、給与計算には反映されていなかった」というミスは、実際によく起きています。
システム間の連携が取れているかどうか、月次で照合する仕組みがあるかどうかを確認しておきましょう。
紙のタイムカードとシステム、どちらがよいか
紙のタイムカードでも、正確に記録・保管されていれば法律上の問題はありません。ただし、集計作業に手間がかかる、転記ミスが起きやすい、保管場所が必要といったデメリットがあります。
クラウド型の勤怠管理システムを導入することで、打刻・集計・保管をまとめて効率化できるだけでなく、給与計算システムとの連携によってミスも大幅に減らすことができます。従業員数が少ない会社でも導入しやすいリーズナブルなサービスが増えていますので、検討する価値は十分あります。
まとめ
勤怠記録は、正確な給与計算の基礎であり、労働時間管理の根拠となる重要な記録です。「なんとなく管理している」「ずっとこのやり方でやってきた」という状態のまま放置していると、未払い残業代の請求や労働基準監督署からの是正勧告というかたちで問題が表面化することがあります。
現在の勤怠管理の方法を一度振り返り、記録の正確性・保存状況・給与計算との整合性を確認してみてください。
「今の勤怠管理のやり方で問題がないか確認したい」「クラウドの勤怠・給与計算システムを導入したいが何を選べばよいかわからない」「残業代の計算が正しくできているか不安」こうしたお悩みをお持ちの経営者・人事担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。
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