社会保険の年齢別対応|40歳・65歳・70歳・75歳で変わる健康保険・厚生年金の扱い

健康保険と厚生年金保険は、従業員の年齢によって加入資格や保険料の扱いが変わります。40歳・65歳・70歳・75歳という節目を迎えるたびに、給与からの控除や必要な届出の内容も変わります。

この記事では、年齢ごとに変わる健康保険と厚生年金保険の扱いを、実務で確認できる形で整理します。

最終更新:2026年10月7日

 

この記事の結論(先に知りたい方はこちら)

  • 健康保険:40歳から介護保険料の上乗せが始まり、75歳になるまで被保険者として健康保険料を負担します。
  • 厚生年金保険:70歳に到達すると被保険者の資格を失い、70歳以降は厚生年金保険料の負担はありません。
  • 65歳以降:介護保険料の納め方が市区町村に変わり、在職老齢年金の基準額は令和8年4月から月65万円になります。

 


 

目次

  1. 年齢で変わる社会保険の全体像
  2. 40歳から始まる介護保険料の上乗せ
  3. 65歳・70歳・75歳で変わる健康保険と厚生年金
  4. 60歳以降の賃金と年金(在職老齢年金)
  5. 高齢者の雇用継続と資格の切替の実務
  6. 実務チェック

 


 

1. 年齢で変わる社会保険の全体像

年齢区分 健康保険 厚生年金保険 介護保険料
40歳未満 加入し、労使で折半して負担します。 加入し、労使で折半して負担します。 負担はありません。
40歳〜64歳 加入し、労使で折半して負担します。 加入し、労使で折半して負担します。 健康保険料に上乗せして徴収されます。
65歳〜69歳 加入を継続し、健康保険料を負担します。 加入を継続し、厚生年金保険料を負担します。 市区町村へ納付します。
70歳〜74歳 加入を継続し、健康保険料を負担します。 資格を喪失し、保険料の負担はありません。 市区町村へ納付します。
75歳以上 資格を喪失し、後期高齢者医療制度へ移行します。 資格を喪失し、保険料の負担はありません。 市区町村へ納付します。

年齢の区切りは「誕生日の前日」で判定する

年齢の判定は民法の年齢計算によるため、誕生日の前日に年齢が加算され、その日が属する月から取扱いが変わります。

 


 

2. 40歳から始まる介護保険料の上乗せ

介護保険の被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上65歳未満の医療保険加入者である第2号被保険者に分かれます。会社員の多くは、40歳から65歳になるまでの間、第2号被保険者として介護保険料を負担します。

健康保険料に上乗せして、労使で折半する

第2号被保険者の介護保険料は、健康保険料と合わせて給与から控除します。負担は健康保険料と同じく労使折半です。協会けんぽの介護保険料率は令和8年3月分から1.62%で、医療分の保険料率にこの率を加えたものが健康保険料率です。

徴収の開始と終了のタイミング

介護保険料の徴収は、40歳の誕生日の前日が属する月から始まります。終了は、65歳の誕生日の前日が属する月からです。この月から第2号被保険者ではなくなり、介護保険料は健康保険料から切り離されます。

保険料率の水準は、協会けんぽ「介護保険料率」で毎年度の率を確認できます。

 


 

3. 65歳・70歳・75歳で変わる健康保険と厚生年金

65歳:介護保険料の納め方が変わる

65歳に到達すると、介護保険の第1号被保険者となります。会社に勤めたままでも、介護保険料は市区町村へ納める形に変わります。

健康保険と厚生年金保険はそのまま継続し、健康保険料は引き続き給与から控除されます。

70歳:厚生年金保険の資格を喪失する

70歳に到達すると、その誕生日の前日に厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。資格を失うのは厚生年金保険だけで、健康保険は引き続き加入します。このため、70歳以降の給与からは厚生年金保険料を控除しません。

在職中に70歳に到達し、そのまま同じ事業所で働く場合は、「70歳到達届」(厚生年金保険被保険者資格喪失届・70歳以上被用者該当届)を、70歳到達日から5日以内に提出します。70歳以上被用者として働く期間は、厚生年金保険料は徴収されず、年金額にも反映されません。

受給資格期間を満たしておらず、70歳を過ぎても厚生年金保険に加入したい場合は、高齢任意加入の仕組みがあります。保険料は、事業主の同意が得られれば労使折半、同意が得られなければ全額本人負担です。

75歳:後期高齢者医療制度へ移行する

75歳に到達すると、健康保険の被保険者資格を喪失し、後期高齢者医療制度の被保険者となります。健康保険の資格喪失日は誕生日の当日です。会社は健康保険被保険者資格喪失届を提出し、給与からの健康保険料の控除も終わります。

医療費の自己負担割合は、70歳から74歳までは原則2割(現役並み所得者は3割)、75歳以上は原則1割(現役並み所得者は3割、一定所得以上の方は2割)です。70歳から74歳の方には高齢受給者証が交付されます。

70歳到達時の届出の内容は、日本年金機構「従業員が70歳になったとき」で確認できます。

 


 

4. 60歳以降の賃金と年金(在職老齢年金)

老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、賃金と年金の合計額が一定の水準を超えると、年金の一部が支給停止されます。これが在職老齢年金の仕組みです。賃金は総報酬月額相当額、年金は基本月額で計算します。

令和8年4月から基準額が月65万円に引き上げられた

令和7年の年金制度改正により、支給停止の基準額は令和8年4月から月65万円に引き上げられました。賃金と老齢厚生年金の合計が月65万円以下であれば年金は全額支給され、超えた場合は超えた分の半額が支給停止となります。

この基準額は、65歳以上の方が厚生年金保険の被保険者である場合だけでなく、70歳以降で被保険者でなくなった方にも適用されます。

高齢社員の働き方を設計するときの視点

基準額の引き上げにより、これまで年金の一部が止まっていた方も、受け取れる年金が増えることがあります。再雇用後の賃金や労働時間を検討する際は、年金と合わせた手取りを確認しておくと、本人への説明がしやすくなります。

制度の内容と計算方法の詳細は、在職老齢年金制度の見直しの記事で整理しています。

 


 

5. 高齢者の雇用継続と資格の切替の実務

65歳までの雇用確保は義務、70歳までは努力義務

高年齢者雇用安定法では、希望者全員を65歳まで雇用する措置が義務づけられています。さらに令和3年4月の改正により、70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務となりました。70歳までの定年引き上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度、70歳まで継続的な業務委託契約の締結などが措置の例です。

70歳までの就業確保は、定年年齢の引き上げを義務づけるものではありません。どの措置を選ぶかによって、社会保険の資格の扱いも変わります。

再雇用のときは資格喪失と取得が同時に起きる

定年退職の翌日から同じ会社で再雇用する場合は、退職による資格喪失と再雇用による資格取得が続けて起こります。資格喪失届と資格取得届の両方を提出し、退職日と再雇用日が確認できる書類を添付します。

資格喪失日は原因によって異なります。退職は退職日の翌日、70歳到達による厚生年金保険の喪失は誕生日の前日、75歳到達による健康保険の喪失は誕生日の当日です。届出は、いずれも事実が発生した日から5日以内が原則です。

事業所が社会保険の適用事業所にあたるかも確認しておきましょう。考え方は、社会保険の強制適用事業所・任意適用事業所の記事で整理しています。

 


 

6. 実務チェック

年齢による切替は、月をまたぐと保険料の過不足に直結します。

確認項目 チェックの内容
年齢の把握 従業員マスタの生年月日をもとに、民法上の年齢で判定しているか。40歳・65歳・70歳・75歳の到達月を事前に把握しているか。
保険料の計算 40歳到達月から介護保険料が加算され、65歳到達月の前月分まで続いているか。70歳到達後は厚生年金保険料を控除していないか。前月との差額で確認しているか。
被扶養者 被扶養者の年齢と収入を確認し、扶養に入る・外れる手続きの漏れがないか。
届出 資格取得・喪失、70歳到達の各届出を、事実が発生した日から5日以内に提出しているか。

被扶養者の年齢と収入もあわせて確認する

被扶養者の認定では、年齢だけでなく収入の要件も確認します。配偶者を被扶養者とする場合は、国民年金の第3号被保険者の要件として20歳以上60歳未満という年齢の範囲があり、20歳に到達した時点で手続きが必要です。

収入の壁については、社会保険の130万円の壁の記事で詳しく解説しています。

給与計算システムの多くは、生年月日が正しく登録されていれば年齢の切替を自動で判定します。介護保険料の加算や70歳以降の厚生年金保険料の停止は、前月との差額を確認すると気づきやすくなります。

 


 

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本記事は2026年10月7日時点の公表情報に基づく一般的な解説です。実際の取扱いは、加入している健康保険や個別の事情によって異なる場合があります。