強制適用事業所とは
強制適用事業所とは、法律により社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられている事業所のことで、具体的には以下の事業所が該当します。
1.国、地方公共団体又は法人の事業所であって常時従業員を使用するもの
2.個人経営の事業所で、常時5人以上の従業員を使用する法定業種に該当するもの
これらの事業所は、事業を開始した時点で自動的に社会保険の適用事業所となり、適用除外に該当しない従業員は全員加入する必要があります。
法定業種は多岐にわたる為、以下にあたる業種以外は原則として法定業種に該当すると考えてください。
- 農林水産業
- 旅館、飲食店、接客業、理容業等(サービス業)
- 宗教等
任意適用事業所とは
任意適用事業所とは、本来は強制適用の対象外であるものの、事業主が申請を行い、厚生労働大臣の認可を受けることで社会保険の適用事業所となる事業所のことです。
任意適用の申請をするにあたり、メリット・デメリットは下記となります。
メリット |
デメリット |
従業員の福利厚生充実 | 事業主の保険料負担増加 |
優秀な人材の確保・定着率向上 | 継続的な事務手続きが必要 |
企業の信頼性・イメージ向上 | 取消時のハードルが高い |
扶養の範囲内(年収130万円未満等)で働いている従業員の方が、社会保険に加入する必要が出てくる可能性もあるため、事前の十分な説明と慎重な検討が必要です。
適用事業所の分類
強制適用事業所、任意適用事業所の範囲を分かりやすく整理すると下記のとなります。
国、地方公共団体、法人で常時1人以上使用 ⇒ 強制適用事業所
個人経営で法定業種、常時5人以上使用 ⇒ 強制適用事業所
個人経営で法定業種、常時5人未満使用 ⇒ 任意適用事業所
個人経営で法定業種以外 ⇒ 任意適用事業所
任意適用申請の流れと注意点
任意適用するにあたり、申請の流れは下記となります。
- 従業員(被保険者となるべき者に限る)の2分の1以上の同意を取得
- 必要書類の準備・作成
- 年金事務所への申請書提出
- 年金事務所での審査
- 厚生労働大臣の認可・適用開始
申請期間について、任意適用の申請から認可までには一定の期間を要します(通常2週間~1ヶ月程度)。認可された日付で社会保険の取得扱いになるため、認可を受けるまでの期間中、従業員は社会保険の被保険者ではありません。そのため、認可を受けるまでは国民健康保険等には継続して加入しておく必要があります。
任意適用の申請において、従業員の同意を取得する前に、上記の期間や保険料負担について従業員の方へ十分に説明しておきましょう。
併せて、一度任意適用事業所となった後に任意適用の取り消しをする場合、従業員の同意が4分の3以上必要となり、取得時よりもハードルが上がるため、慎重な検討が必要です。
まとめ
任意適用制度は、強制適用の対象外となる小規模事業所でも社会保険に加入できる制度です。従業員の福利厚生向上や人材確保の観点からメリットがある一方で、手続きの複雑さや継続的な保険料負担など、注意すべき点も多くあります。
申請を検討される際は、事業の実態や将来性を踏まえ、専門家である社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めします。適切なアドバイスにより、スムーズな手続きと安心した制度運用が可能となります。
本コラムの内容は2025年6月時点の法令に基づいています。最新の制度については、年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。